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2025/04/01 問い合わせの多い質問

【防水メーカー視点で解説】改正建築物省エネ法

2025年(令和7年)4月1日、建築物省エネ法が改正されました。今回は、防水材料メーカー視点で改正建築物省エネ法の変更点を解説します。

 

目次

  1. 主な変更点
  2. 省エネ基準の適合判定
  3. 問い合わせの多い質問 Q&A

1.主な変更点

今回の改正による主な変更点は、以下の通りです。

【省エネ基準適合義務付けの拡大】

これまでの改正建築物省エネ法では、一部の非住宅建築物に対して省エネ基準適合を義務付けていました。今回の改正により、全ての住宅・非住宅の新築工事・増改築工事に省エネ基準適合が義務付けられます。なお、改修工事には適用されません。当基準は2030年までに、ZEH・ZEB水準まで義務基準の引き上げを目標にしています。

■改正前

 

大規模
延床2,000㎡以上

中規模
延床300㎡以上

小規模
延床300㎡未満

非住宅適合義務適合義務説明義務
住宅届出義務届出義務説明義務

■改正後

 

大規模
延床2,000㎡以上

中規模
延床300㎡以上

小規模
延床300㎡未満

非住宅適合義務
住宅

届出義務制度及び説明義務制度は2025年4月以降廃止されました。

【用語解説】

ZEH(ゼッチ)

ネット・ゼロ・エネルギーハウスの略、 断熱性能と省エネ性能を高めて消費量を減らしつつ、創エネ性能を高めて再生可能エネルギーを生み出すことで、それらを合わせた消費量が実質ゼロ以下となる住宅

ZEB(ゼブ)

ネット・ゼロ・エネルギービルディングの略、 エネルギー消費量を軽減・効率化し、さらに創出エネルギーと両立することで、エネルギー収支ゼロを目標とする建築物(住宅を除く)

 

【省エネ基準適合義務の対象外となる建物】

  • 新3号建築物(木造延べ面積が200㎡以下かつ平屋の建築物)
  • 10㎡以下の建築物 
  • 居室を有しないこと又は高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要のないもの
  • 歴史的建造物・文化財等 ・応急仮設建築物、仮設建築物、仮設興行場等

2.省エネ基準の適合判定

省エネ基準の適合判定(省エネ適判:エネルギー性能適合判定の略)は、以下の2種類の方法があります。

性能基準

建物の外皮性能及び一次エネルギー消費性能の計算値をもとに、断熱材を選定する方法

【用語解説】

外皮性能

外皮(外壁、窓、屋根等)の表面積あたりの総熱損失量外皮平均熱還流率(UA値)と、冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)により構成され、いずれも地域区分別に規定された基準値以下を満たす必要がある(住宅のみ適用)

一次エネルギー消費性能(BEI値)

空調、冷暖房、換気、照明、給湯、昇降機等のエネルギー総消費量
設計一次エネルギー消費量(省エネ手法を考慮したエネルギー消費量)を基準一次エネルギー消費量(標準的な仕様を採用した場合のエネルギー消費量)で除した数値で、1.0以下を満たす必要がある【住宅・非住宅に適用】 
※ 非住宅の場合は、建築物の種類・規模により異なります。

 

仕様基準

性能基準を算定する代わりに、建物各部位の熱抵抗値から断熱材を選定する方法(省エネ適判を行うことが比較的容易な特定建築行為に限る)

【解説】

省エネ適判を行うことが比較的容易な特定建築行為

1~3のいずれかに該当する新築住宅は、省エネ適判は不要です。

  1. 仕様基準に基づき外皮性能及び一次エネルギー消費性能を評価する住宅
  2. 設計住宅性能評価を受けた住宅の新築
  3. 長期優良住宅の設計または長期使用構造等の確認を受けた住宅の新築

出展:平成28年国土交通省告示第266号(省エネ基準)、令和4年国土交通省告示第1106号(誘導基準)

 

判定方法の特徴

新築住宅を仕様基準で判定する場合、断熱材が建物各部位ごとに設定された熱抵抗値を上回ることで、基準を満たしていると判断できます。そのため、性能基準で要求される複雑な計算処理が不要になり、判定を簡易化できるため、国土交通省では仕様基準を推奨しています。なお非住宅の場合は、一次エネルギー消費性能基準による省エネ適判を受ける必要があります。

 性能基準仕様基準
判別方法住宅外皮性能基準+
一次エネルギー消費基準
建物各部位の熱抵抗値
非住宅一次エネルギー消費基準判定不可
設計自由度
自由度の高い断熱設計が可能

断熱設計の弾力性に難
手間・コスト
熱貫流率等の計算負担が大きい

複雑な計算処理が不要

防水メーカーにできること

外皮性能基準は、各部位の熱損失量の合計値が必要になります。防水メーカーで判定できる範囲は屋上部位に限定されるため、建物全体の計算値を算定することはできません。性能基準で評価する場合は必要に応じて、断熱材の熱伝導率・熱抵抗値・熱貫流率等の情報を提供します。

3.問い合わせの多い質問 Q&A

外皮性能及び一次エネルギー消費性能を仕様基準で評価する場合、国土交通省告示第783号別表第10から該当地域区分を確認し、下記より断熱材に必要な熱抵抗値と厚さを確認してください。

青森市で新築のマンション建設を計画している。露出断熱仕様で必要な断熱材の厚さを教えてほしい。

仕様基準によれば、青森市の断熱材の地域区分は3、必要な断熱材の熱抵抗値は1.6になります。
よって、熱抵抗値を上回る断熱材(シェーンボード)の適用厚さは40mm以上です。


大阪市でマンションの改修を計画している。既存が押えコンクリート(断熱25mm)だが、露出断熱工法で改修する場合に、必要な断熱材の厚さを教えてほしい。

改修工事は建築物省エネ法の適用外です。新築と同様に考えた場合、大阪市の地域区分は6、必要な断熱材の熱抵抗値は0.9になります。
既存のポリスチレンフォーム断熱材の熱伝導率を0.028とした場合の熱抵抗値は0.892であり、改修工事により残り0.008を確保する場合があります。
よって、熱抵抗値を上回る断熱材(シェーンボード)の適用厚さは25mm(最低厚さ)で十分です(熱抵抗値1.087)。


札幌市で、マンションの建設を計画している。必要な外皮性能基準の計算値(UA値・ηAC値)を教えてほしい。
また、一次エネルギー消費性能値(BEI値)も教えてほしい。

住宅の外皮性能の評価は、屋根だけでなく様々な部位が対象となります。
よって、当社では必要な断熱材の熱伝導率・熱抵抗値・熱還流率等の情報提供は可能ですが、計算値の算定はできません。なお、仕様基準で評価する場合、屋上部位に必要な断熱材の厚さを回答することは可能です。


福岡市で病院の新棟を計画している。保護断熱仕様で、必要な断熱材の厚さを教えてほしい。

非住宅建築物では仕様基準による断熱材の厚さ判定は適用外となるため、当社では回答できません。
BEI値の算定に必要な断熱材の熱伝導率・熱抵抗値・熱還流率等の情報は提供可能なので、参考としてください。