最大約23℃の温度低減効果!アスファルト防水で推奨する遮熱塗料3選
防水層の劣化を促進させる大きな原因の一つに太陽光の熱が挙げられます。7月に入りいよいよ夏場を迎える中、防水層に及ぼす熱負荷の影響はますます大きくなります。最近では、防水層に塗布する仕上塗料に遮熱性能を付与した製品が標準仕様化されてきています。また、仕上塗料の性能が多様化する中で、「どれを選べばいいのかわからない…。」そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。そこで、今回の記事では
- 温度上昇がもたらす防水層への影響
- 遮熱塗料が防水層にもたらす効果
- 遮熱塗料の選定ポイント
- アスファルト防水で推奨する遮熱塗料3選
について解説します。
※遮熱塗料は専門用語で高日射反射率塗料といいますが、このブログではわかりやすくする為に遮熱塗料を使用します。
1.温度上昇がもたらす防水層への影響
突然ですが、7月25日が「日本の最高気温記念日」ということをご存知でしょうか。1933年7月25日に山形県山形市で最高気温40.8℃が記録されたことから制定されました。この記録は2007年8月16日に埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で40.9度を観測するまで74年間、記録が更新されませんでした。しかし、近年は最高気温が40℃を超える日が増加しており、2020年8月17日には静岡県浜松市で41.1℃を記録するなど、状況はますます悪化しています。このような日差しの強い環境下に防水層が曝されると、その影響は深刻です。
アスファルトルーフィングの熱負荷はアスファルトの硬化、脆弱化に繋がります。太陽光の熱や紫外線の影響は劣化要因の大半を占め、経年曝露により、針入度(石油アスファルトの硬さを表す指標)が減少していき、結果的に劣化速度を速めます。下の表は過去のアスファルト防水層の曝露経過年数に対する針入度を表したグラフで、経年により熱や紫外線などの影響により針入度が低下し、アスファルトが劣化している事がわかります。
保護工法と露出工法の防水層経年劣化具合
出典:建設省(現:国土交通省)「建築物の耐久性向上技術の開発」の研究
また、各温度別の針入度劣化速度を算出した予測グラフを見てみると、熱負荷がかかるほど、アスファルトの劣化速度は増加する事がわかります。
温度別のアスファルト針入度変化速度グラフ
2010年度日本建築学会大会「防水材料の耐候性試験その27アスファルト防水層の耐候性予測方法の提案」
2.遮熱塗料が防水層にもたらす効果
一般的に、遮熱塗料のもたらす効果として次の例が挙げられます。
- 防水層の表面温度上昇を抑制し、熱負荷による劣化を抑える
- 室内温度上昇を緩和し、冷房費用の削減・省エネ効果に繋がる
- 防水層、屋根の熱負荷によるダメージを軽減し、建物全体の耐久性維持に繋がる
尚、同じく建物の温度調節で利用される建材に断熱材があります。断熱と遮熱は、どちらも太陽光の熱を反射させるはたらきがあると混同されがちですが役割が異なります。断熱は躯体内部に熱を伝わりにくくするのに対して遮熱は、日射を吸収しないように反射することを指します。
断熱と遮熱の違いを表したイメージ図
夏の暑さ対策で重要なのは、太陽の日射エネルギーを抑えて建物を暖めないようにすることです。断熱材で熱の伝導を遅らせ、遮熱塗料による反射効果で熱の侵入を軽減することが、快適な室内環境と建物の耐久性向上に繋がります。また、断熱材と遮熱塗料を組み合わせた防水工法が最も効果的な暑さ対策になります。
断熱と遮熱を組み合わせたイメージ図
一般塗料や露出用のルーフィングにまぶされているスレート砂にも紫外線から防水層を守る効果はあります。一方、遮熱塗料は太陽光に含まれる近赤外線領域の光を効率良く反射する事もできるので、紫外線による経年劣化と赤外線による熱的劣化を同時に軽減する事ができます。つまり、一般塗料と比較すると熱の反射量が多く、建物内部に伝わる熱透過量を小さくする事ができます。
一般塗料と遮熱塗料の熱反射量、熱透過量を表すイメージ図
当社では、一般塗料と高遮熱塗料ハイクール(ホワイト色)をそれぞれアスファルト防水断熱露出工法の砂付ルーフィング上に塗布して、赤外線ランプを照射する事で表面温度を測定しました。その結果、70分間照射した時点で、約23℃の表面温度低減が確認されました。下の画像からもわかるように、遮熱塗料を塗布した試験体の熱負荷が軽減されている事がよくわかります。これにより防水層の劣化を抑制する事ができます。
赤外線ランプ照射試験の様子
試験の写真と測定グラフ
3. 遮熱塗料の選定ポイント
続いては、遮熱効果を最大限に活かす塗料選定のポイントをお伝えします。
1つ目は日射反射率の高い白色、淡彩色の塗料を選ぶことです。太陽光の波長は紫外線領域、可視領域、近赤外線領域の3つに分類されます。遮熱塗料はこのうち近赤外線領域(波長780~2,500nm)の太陽光を最も反射します。一般的に明度の高い白色、淡彩色は可視光領域の反射率が高く、他の色相と比較しても遮熱効果が出やすいとされています。
塗料の色相と日射反射率の関係
2つ目は耐候性です。遮熱塗料は雨水等の汚れによって劣化が進むと遮熱効果も低下していきます。そのため、汚れにくく耐候性の高い塗料を選定することで遮熱性能を維持し、防水層の耐用年数を向上させる効果が期待できます。
4. アスファルト防水で推奨する遮熱塗料3選
日新工業が推奨するアスファルト系防水用の遮熱塗料をご紹介します。
・プレノカラー遮熱(仕様記号:NZ)
遮熱効果を付与した水性カラー塗料です。当社の標準仕上塗料として販売しています。
・サーモロックカラーMB(仕様記号:MB)
従来品よりも明度の低い色を取り揃えた水性カラー遮熱塗料です。防水層表面の明るさを抑えたい場合に最適です。
・ハイクール(仕様記号:H)
遮熱効果のある製品の中で最も高い耐久性を有しており、室内環境の向上と冷暖房時消費電力を抑制する効果があります。
高反射塗料の日射反射率
その他塗料製品についてのご紹介はこちらをクリック※防水保護塗料ページに移動します
最後に本記事の内容をもう一度確認してみましょう。
- 遮熱とは太陽光に含まれる近赤外線領域の光を効率良く反射し、屋内に伝わる熱量を減少させる
- 遮熱塗料を塗布する事で、露出アスファルト防水層の太陽光による劣化を抑制する事ができる
- 白色、淡彩色の塗料は日射反射率が高く、遮熱効果も大きい
- 防水工事において断熱材と遮熱塗料を組み合わせることで効果的な暑さ対策になる
その他、防水設計の事でお困り事がございましたら、まずはお問い合わせフォームからご連絡ください。