設計価格
カタログ
2021/08/01 防水トレンド情報

【台風時期到来‼】強風に強い防水工法TOP3

例年、8月頃から頻繁に発生する台風。近年では、2018年に大阪で47.4m/s、2019年には東京で41.5m/sの最大瞬間風速を記録し、立て続けに日本の大都市で猛威を振るいました。気象庁のホームページでは、風速の各範囲における主な被害の状況を記載しており、風速39~52m/sの風が吹くと、通常走行中の鉄道車両が転覆したり、樹木が根返りする事から、最大瞬間風速40m/sを超える事がいかに凄いかが、お分かり頂けるかと思います。

防水層は高層階に施工される事が多い為、風の力が強くかかります。台風が発生すると、家屋の倒壊や看板が飛ばされる等のニュースをよく目にするかと思いますが、防水層も例外ではありません。近年では温暖化によって、これまでにない勢力の台風が上陸するリスクが増大していると言われており、風の力に対して、より注意する必要があります。

強風によって加硫ゴム系シート防水が剥がれた様子

そこで今回は、台風に負けない防水選定にポイントを絞って解説します。

  1. 防水層にかかる風圧力
  2. 飛散の原因と対策~耐風圧を考慮すべき防水工法とは?~
  3. 強風に強い防水工法TOP3


1.防水層にかかる風圧力

防水層にかかる風の力を「風圧力」といいます。台風等の強風時には、特に防水層に対して上向きの力が働く為、この力に耐えられる事が求められます。そして、この風圧力に耐える力が大きければ大きいほど、耐風圧性が良好であると言えます。

風圧力のイメージ

風圧力のイメージ

「改正建築基準法施行令第八十二条の五」には、以下のような記述があります。

「屋根ふき材、特定天井、外装材及び屋外に面する帳壁が、第三号ニの規定によつて計算した建築物の各階に生ずる水平方向の層間変位及び同号ロの規定によつて計算した建築物の損傷限界固有周期に応じて建築物の各階に生ずる加速度を考慮して国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて風圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して構造耐力上安全であることを確かめること。」※詳細はこちら

このように設計時に風圧力を考慮する事が求められています。以下はその風圧力を求める計算式です。

W=q×Cf

W:風圧力(N/㎡)

q:速度圧(N/㎡)

Cf:ピーク風力係数

q=0.6×Er2×Vo2 

Er:平均風速の高さ方向の分布を表す係数

Vo:基準風速

基準風速は地域ごとに定められており、上記の計算式を使用して、高さ100m地点での陸屋根の風圧力を算出すると以下のようになります。※風圧力の詳しい計算方法は省略します。

地点ごとの風圧力

地点ごとの風圧力(地表面粗度区分Ⅲで算出)

風の強い地域である程、風圧力も大きくなっており、より耐風圧性を考慮する必要があります。


2.飛散の原因と対策~耐風圧を考慮すべき防水工法とは?~

過去に強風により被害にあった物件では、機械固定工法(塩ビシート防水)が用いられているケースが比較的多く見られています。その原因として、防水層の下地への固定が部分的であり、固定強度が低い事が挙げられます。実際に各防水工法の固定強度による安全率を先ほど算出した東京23区の数値と比較してみると、下地への固定強度が最も弱い塩ビシートは、安全率が70%となっています。一方でアスファルト防水新熱工法、改質アスファルト防水常温粘着工法、ウレタン塗膜防水工法は固定強度が高く、安全率が1000%を超えています。

東京23区の場合の接着強度及び安全率

※単軸引張試験   引張速度:50㎜/min 測定温度:0,20,40±2℃

固定強度及び安全率(東京23区内、地表面粗度区分Ⅲ、高さ100mの陸屋根)

また、機械固定工法による部分的な固定の場合、防水層が風によって少しでも持ち上がると、固定部分に横方向の力がかかる為、防水層が飛散しやすくなります。尚、加硫ゴム系シート防水の数値はありませんが、接着剤の経年による劣化が顕著な為、全面接着でも、同じく強風の被害をうける事があります。

1pointアドバイス:強風地域で機械固定工法を採用する際は、固定箇所数を増やしてください。



3.強風に強い防水工法TOP3

前述の通り、耐風圧性と固定強度が重要であることはお分かりいただけたかと思いますが、台風のような強風時にも負けない防水とはどのような工法なのでしょうか?

東京23区の場合の接着強度及び安全率

※単軸引張試験   引張速度:50㎜/min 測定温度:0,20,40±2℃

固定強度及び安全率(東京23区内、地表面粗度区分Ⅲ、高さ100mの陸屋根)

最も安全率が高いのは、ウレタン塗膜防水の3705%、次いでアスファルト防水新熱工法・改質アスファルト防水常温粘着工法の1221%となっています。ウレタン塗膜防水は液状の材料である為、下地に対してしっかりと接着されます。次点の新熱工法、粘着工法は粘着層付きのシートが下地によく接着される為、高い固定強度が確保できます。

尚、実際の防水選定では耐風圧の他にも様々な条件を考慮して選定する必要があります。そこで、接着強度が高い上位3つを比較してみます。

防水工法比較(接着強度込み)

強風に強い防水工法の比較表

※価格は200㎡以上の施工を基準とした設計価格です。詳細はお問い合わせください。

アスファルト防水新熱工法の施工方法は、熱アスファルト防水在来工法に倣っている為、信頼性に長けます。(在来熱アスファルト防水の実績は100年以上)また、耐用年数も他工法と比べると長い為、イニシャルコストに加えて、ランニングコストも抑える事ができます。

高い固定強度が求められる強風地域では、ウレタン塗膜防水が適していますが、実績や耐用年数の観点から、一般的な地域の防水にはアスファルト防水新熱工法を推奨致します。

アスファルト防水新熱工法の詳細はこちらをクリック


まとめ

最後に本記事の確認をしてみましょう。

  • 塩ビシート防水・ゴムシート防水を選定する場合は、特に耐風圧の検討をする必要がある
  • 強風地域で塩ビシート防水を選定する場合は、固定箇所を増やす
  • 強風地域でゴムシート防水を選定する場合は、下地やプライマーの管理を十分に行う必要がある
  • 強風に強い防水工法は、アスファルト防水新熱工法・改質アスファルト防水常温粘着工法・ウレタン塗膜防水工法である
  • 耐風圧性・信頼性・耐用年数の観点から新熱工法がお勧めである

台風などによる強風は自然災害であり、避けられるものではありません。設計段階から強風に強い防水層の選定をしてください。