【問い合わせの多い質問】下地コンクリートの乾燥状態の確認方法
設計事務所、建設会社から防水工事店にいたるまで、数多くの問い合わせがある中で、今回は防水施工における「下地コンクリートの乾燥状態の確認方法」をピックアップして、「各団体の仕様書等の記載内容」を中心にご紹介します。
各団体の仕様書等の記載内容
【建築工事監理指針 上巻】 826頁9.2.4(1)(ア) 令和元年版は831頁
③乾燥状態は、次のような方法によって判断する。 1)高周波水分計による下地水分の測定 2)下地をビニルシートやルーフィング等で覆い、一昼夜後の結露の状態 3)コンクリート打込み後の経過日数 4)目視による乾燥状態の確認 |
【日本建築学会 建築工事標準仕様書・同解説 JASS8】
4頁,8頁,93頁など(2014年版) 4頁,9頁,115頁など(2022年版)
十分に乾燥していること.(2014年版) 下地の乾燥状態は防水工法に適した状態であること(2022年版) (1)下地の検査・試験 施工に先立ち,下地の乾燥状態及び表面状態を点検し,防水施工上支障のないことを確認する. 支障があると判断される場合には、監理者の指示を受ける. |
また、シート防水機械固定工法に関して
なお、加硫ゴム系または塩化ビニル樹脂系防水を下地に機械的に固定する工法や、接着剤にポリマーセメントペーストを使用するエチレン酢酸ビニル樹脂系シート防水などでは下地の乾燥状態は施工にあまり影響しないが,防水層を施工する段階では十分乾燥している方がよい.(2014年版) |
なお、加硫ゴム系または塩化ビニル樹脂系防水を下地に機械的に固定する工法や、接着剤にポリマーセメントペーストを使用するエチレン酢酸ビニル樹脂系シート防水などでは下地の乾燥状態は施工にあまり影響しないが,所要のコンクリート強度が発現するまで十分な養生を行ったうえで,防水層を施工する段階では十分乾燥しているほうがよい.また,ケイ酸質系塗布防水工法については防水層の施工する段階では湿潤状態の方がよい.(2022年版) |
との記載があります。
【全国防水工事業協会 防水施工法】 16頁,22-22頁など
よく乾燥していること(湿式の工法及び機械的固定工法を除く)。 |
d.下地の乾燥の確認 防水工法の接着工法、密着工法、絶縁工法及び緩衝工法では、下地を十分に乾燥させることが重要である。コンクリートの乾燥は一般に,コンクリートの打設後の養生期間,その後の天候などを考慮して、表面が白っぽくなっていること(プレキャスト鉄筋コンクリート(PCa)部材やALCパネルも同)で確認することができるが,乾燥状態には,次のような方法もある。 ①晴天時に,1,000㎜×1,000㎜程度の大きい黒いシートなどを、下地の表面に敷き,その周囲を粘着テープなどで固定して一昼夜放置して剥がし,下地の表面が結露していたり濡れ色になっていないことを確認する方法。 ②水分計を用いて測定し、その数値を確認する方法。 |
MEMO 露出仕上げの防水層では,下地内部の含有水分の蒸発によってふくれが発生する場合が多いが,この問題を解決するには,下地表面の乾燥だけを確認しても解決できない。上記①及び②の方法でも,防水層のふくれがでないというところまで確認することはできない。 なお,絶縁工法に脱気装置などを設置して防水層の膨れを防止するという案があるが,この方法ではふくれを防止することはできない。脱気装置などを設置することによって、ふくれを低減することは可能である。 |
MEMO コンクリート打設後の養生期間 一般に 夏期で3週間程度以上 冬期で4 〃 の養生期間を取って,防水工事を行うことが多い |
MEMO 露出仕上げの防水層では,下地内部の含有水分の蒸発によってふくれが発生する場合が多いが,この問題を解決するには,下地表面の乾燥だけを確認しても解決できない。上記①及び②の方法でも,防水層のふくれがでないというところまで確認することはできない。 なお,絶縁工法に脱気装置などを設置して防水層の膨れを防止するという案があるが,この方法ではふくれを防止することはできない。脱気装置などを設置することによって、ふくれを低減することは可能である。 |
【日本ウレタン建材工業会 ウレタン塗膜防水ハンドブック2018年版】 66頁,77頁など
項目 | ポイント | 処理方法 |
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1.下地水分 | 下地は十分に乾いていること ○表面が白く乾燥していること(目視) ○フィルム張り試験をして結露がないこと ○水分計で10%以下(参考値)であること | ●下地の表面しか乾燥していないと考えられる場合は、脱気等(絶縁工法や脱気筒の設置等)のふくれ防止策を考えること |
5.4.2 水分測定【参考】 下地(躯体)の水分量の測定方法として、高周波静電容量式水分計を用いる方法を以下に示す。 高周波静電容量式水分計による測定(表面から40㎜程度まで) 1.使用する水分計 ・コンクリート,モルタル用高周波静電容量式水分計 HI-520-2(㈱ケツト科学研究所製)もしくはそれに準ずるもの 2.測定手順 ①水分計を、以下の通りセットする。 材料選択:コンクリート(対象下地に合わせて選択する) 温度補正:自動補正 ②測定対象下地から,測定対象箇所を適宜選択する。 ③水分計の取扱説明書に従って、電源を投入する。 ④水分計を測定対象箇所の下地表面に置き,表示値を読みとる。測定は、水分計を置く位置を適宜ずらしながら数回行い,平均的な表示値を求める。 3.結果の表示 ・数ヶ所の表示値の平均値を,測定結果とする。 4.注意事項 ・水分計の表示値は真の水分率ではないので,水分の目安にはなるが解釈には注意を要する 5.水分量の目安 ・施工可能な水分量の目安は,10%以下とする。 ・測定結果が10%以下であっても,下地表面が水分により黒く変色している(湿っている)場合は,表面が乾燥するまで施工しない。 ※参考資料:コンクリート・モルタル水分計 HI-520-2 取扱説明書(㈱ケツト科学研究所) |
弊社の推奨
コンクリート打設後の養生期間「夏期で3週間程度以上」「冬期で4週間程度以上」を軸に、過去1ヶ月の気象情報とを勘案した後、「目視による乾燥状態の確認」を行うことを推奨しております。
水分計の数値の根拠
防水施工の目安として「水分計を用いて8%」「ウレタンなら10%」と長らく、建設業界で言われており、過去には
【建築工事監理指針】では平成5年版(779頁)に
・・・① 高周波表面水分計で定期的に数箇所測定し判断する方法。通常,含水率8°/wt程度以下を可とする。
【日本建築学会 建築工事標準仕様書・同解説 JASS8】では1972年版(35頁)に
・・・Kettの水分計を用いて8%以下の状態にあれば一応安全圏内にあるといえる。
との記載がありました。
尚、この件に関して「新樹社」発行の「防水ジャーナル」2014年2月号において、日本大学の湯浅昇教授が詳しく紹介しているので参考にしてください。
・最新情報 – 日本大学 建築材料研究室-湯浅研 (jimdofree.com)
次回ブログは10月1日(金)公開予定です。