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2023/12/01 問い合わせの多い質問

【5分で基礎固め】寒冷地における防水工法と屋上納まりの留意事項

冬の寒い時期に防水工事を行う場合、積雪や凍結への配慮は防水工事の品質確保において重要です。とりわけ、寒冷地である北海道などでは、設計段階から適切な対策を講じる必要があります。

そこで今回は、はじめて寒冷地での設計をされる方をターゲットにして、寒冷地防水の留意点と不具合を起こさないための納まり例をお伝えします。

この記事の内容

  1. 寒冷地防水で考慮すべき留意点
  2. 寒冷地防水の選定ポイント
  3. 寒冷地防水で推奨される納まり例
  4. まとめ

 

1.寒冷地防水で考慮すべき留意点

【設計上の留意点】

部位留意点
コンクリートスラブ
  • 結露防止のため、外断熱が望ましい
  • 側溝は設けず、スラブ勾配でドレンまで集水させる
ドレン
  • 縦引き型、内樋形式とする
  • 熱欠損防止のため、スラブ下、雨水管本体を断熱補強する(下記納まり図参照)
パラペット
  • 仕上面から400mm程度の高さをとる
  • 熱欠損防止のため、立上りに断熱材を張付けることもあるが、ディティールは十分検討する(下記納まり図参照)
笠木
  • 腐食しないアルミニウム製笠木とし、オープンジョイント方式とする
  • 温度差による熱膨張、伸縮を考慮し、本体の長さは4m以内とする
保護層
  • 保護コンクリートの厚みは最低80mmとる
  • 保護コンクリートの伸縮目地は立上りから600mm以内に設ける(下記納まり図参照)
  • 立上りを保護する場合、乾式保護板は積雪の横力により破損するおそれがあるため、コンクリートで保護する

【管理上の留意点】

項目施工中竣工後
  • 降雪中は施工不可
  • 施工期間中は雪養生が必要
  • 積雪、落雪による防水層の損傷
凍結(低温)
  • 低温による施工不良
  • 接着剤等の接着不良
  • 凍害による保護層のひび割れ、剥離、浮き
結露
  • プライマー類の気化熱による表面結露
  • 壁内部、天井の腐食劣化
  • 湿潤による断熱材の性能低下
その他
  • 湿気硬化型材料の硬化、接着不良
 

 

【用語解説】

結露 : 室内の空気中に含まれる水蒸気が、外気との温度差のある壁、天井で冷却されて水滴に変化する現象

凍害 : コンクリートにおいて、内部の水分が温度変化により凍結膨張と融解を繰り返し、ひび割れ、剥離、浮きが生じる現象

寒冷地防水の設計を考慮する際は、このような問題を適切にカバーできる工法の選定が重要です。

寒冷地の不具合対策で推奨する当社製品については、次月詳しく紹介します!

 

2.寒冷地防水の選定ポイント

【各防水工法の寒冷地における特長】

①アスファルト防水熱工法

溶融アスファルトを用いて複数枚のルーフィング類を積層する工法です。100年以上にわたる数多くの実績があります。日本建築学会JASS8では結露対策として、露出断熱防水仕様に防湿用ルーフィングを張付けます。

また保護仕様を採用することで、落雪等の衝撃から防水層の保護が可能です。冬季では溶融アスファルトの温度低下により接着性が低下するため、施工管理に注意が必要です。

 

②改質アスファルト防水トーチ工法

寒冷地ではトーチ工法が最も多く採用されています。工事現場において、トーチバーナーはルーフィングの施工以外に、防水材の加温、コンクリート下地の乾燥、氷雪の溶融などで使用されています。

 

③塩化ビニル樹脂系シート防水

デッキ下地で数多く採用されています。低温下では接着剤の硬化時間が長くなり、付着力が低下するため、機械的固定工法が多く採用されています。

 

④ウレタン塗膜防水

手塗り工法では低温による防水材の増粘、硬化に時間を要するため、硬化促進剤を使用する場合があります。近年では低温の影響を受けにくい超速硬化スプレー防水の施工実績が増えています。

 

【寒冷地で多く採用されている工法】

コンクリート下地では熱工法やトーチ工法、デッキ下地では熱工法や塩ビシート防水機械的固定工法が採用されています。

3.寒冷地で推奨される納まり例

【排水勾配】

雨水等を適切に排水させるため、スラブコンクリートで勾配をとる必要があります。

保護工法 : 1/100~1/50(防水層の上に仕上材を敷設する工法)

露出工法 : 1/50~1/20(防水層が仕上げとなる工法)

※保護工法の推奨勾配は 1/100~1/50ですが、防水改修時に露出工法を採用する場合が多く、長期的に考え当社では1/50勾配を推奨しています。

 

日本建築学会JASS8仕様書「防水下地の勾配と排水」より引用

b.下地の勾配と排水

(1)屋根スラブ、室内の床などで、現場打ちコンクリート・コンクリート平板類・アスファルトコンクリート・砂利を防水層の保護とする場合は、その下地の勾配は1/100~1/50とし、防水層の仕上げを仕上塗料などあるいはなしとする場合には、その勾配は1/50~1/20とする。

(2)防水下地は水がたまることなく、すみやかに排出されること。

 

【パラペット周り】

露出仕様保護仕様
  • 立上りにも断熱材を施工
  • 側溝は設置せず、スラブ勾配で集水
  • パラペットは400㎜内外で設置
  • 立上りも保護コンクリート押さえ
  • 入隅部より600㎜以内に伸縮目地を設置

 

【ドレン・機械基礎周り】

ドレン周り機械基礎周り
  • スラブ下にも内断熱
  • 雨水管本体にも断熱材補強
  • ドレン周りは断熱材を施工しない
  • 立上りにも断熱材を施工
  • 立上り端部は断熱材を施工しない

【NG納まり例】

立上りの高すぎるパラペットアゴ付パラペット+乾式保護板
  • パラペットの高さにより、雪の横力で破断の恐れ
  • スラブ下にも内断熱
  • 雨水管本体にも断熱材補強
  • ドレン周りは断熱材を施工しない
  • 剥落防止のためアゴ付パラペットは設置しない
  • 雪の横力による破損のため乾式保護板は設置しない

※パラペット高さが低い場合には、雪庇の発生する確率が高まるので、十分留意する。

【用語解説】

雪庇 : 吹雪が風下へ徐々に集まることで、氷状の雪の塊となる現象

→ 雪崩や落下防止のため、雪庇の発生を抑制する納まりとすることが重要

 

4.まとめ

寒冷地では寒暖差に伴う温度変化が大きいため、結露、コンクリートの凍結によるひび割れを考慮した防水工法を選択し、適切な納まりとすることが重要です。

  • パラペットの立上りはスラブ面から400mm程度とする
  • 熱欠損防止のため、立上り、スラブ下に断熱材を施工する場合がある
  • 側溝は設けず、スラブ勾配でドレンまで集水させる
  • 排水勾配は露出仕様で1/50~1/20、保護仕様では1/50を推奨する
  • 採用実績は、アスファルト防水熱工法、改質アスファルト防水トーチ工法が多い

次回ブログは2024年1月1日に公開予定です。

今回の寒冷地の留意点を踏まえ、当社の寒冷地向け製品をご紹介します。