【5分でわかる‼】防水層に対する風圧力の計算方法
台風などの暴風が吹く際には、防水層には強烈な上向きの力が働きます。この風の力を「風圧力」と言います。
防水層は、この上向きの力に耐える必要があり、この耐える力が大きければ「耐風圧性」に優れていると言えます。
そこで今回は、風圧力の計算方法を解説します。(風圧力の計算は、「建築基準法施行令第82条の4、5」及び「平成12年建設省告示第1454、1458号」に基づいて行われます)
【風圧力の計算式】
W(風圧力N/㎡)=q(速度圧N/㎡)×Cf(風力係数) q(速度圧N/㎡)=0.6×Er 2×Vo2 Er:平均速度の高さ方向の分布を表す係数 Vo:基準風速 |
-計算の流れ-①地表面粗度区分を確認 ②Erの算出 ③Voの算出 →この結果を基にq(速度圧N/㎡)を求める ④Cf(風力係数)を確認 →この結果を基に、それぞれの部位ごとに W(風圧力N/㎡)を求める |
①地表面粗度区分を確認
建築図面や、各自治体のホームページで確認可能です。
地表面粗度区分 |
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Ⅰ 極めて平坦で障害物がないものとして特定行政庁が規則で定める区域 Ⅱ 地表面粗度区分Ⅰ若しくはⅣの区域以外の区域のうち、海岸線若しくは湖岸線(対岸までの距離が1500m以上のものに限る。以下同じ。)までの距離が500m以内の地域(建築物の高さ13m 以下である場合又は当該海岸線若しくは湖岸線からの距離が 200mを超え、かつ、建築物の高さが 31m 以下である場合を除く。)又は当該地域以外の地域のうち、極めて平坦で障害物が散在しているものとして特定行政庁が規則で定める区域 Ⅲ 地表面粗度区分 Ⅰ、Ⅱ又はⅣの区域以外の区域 Ⅳ 都市化が極めて著しいものとして特定行政庁が規則で定める区域 |
特定行政庁とは?「建築主事を置く」市町村長、「建築主事を置かない市町村」の都道府県知事。(建築基準法内特有の言葉) 海岸線等からの距離海岸線若しくは湖岸線(対岸までの距離が1500m以上のものに限る) 建物の高さ建築物の高さと軒の高さとの平均 |
市町村長等が規則で定めていない場合は「海岸線等からの距離」「建物の高さ」により、Ⅱ又はⅢとなります。
②Er(平均風速の高さ方向の分布を表す係数)の算出
Erは建設省告示第1454号により、以下の計算方法で算出します。
【Er(平均速度の高さ方向の分布を表す係数)】 「H(建物の高さ)」「地表面粗度区分」により算出 ・H(建物の高さ):建築物の高さと軒の高さとの平均(m) ・地表面粗度区分はⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ の4種類(下表参照) -建物の高さが5m以下の場合- -建物の高さが5mを超える場合- Ⅰ. Er=1.7(5/250)0.10≒1.149 Ⅰ.Er=1.7(H/250)0.10 Ⅱ. Er=1.7(5/350)0.15≒0.898 Ⅱ.Er=1.7(H/250)0.15 Ⅲ、Ⅳ Er=1.7(5/350)0.20≒0.693 Ⅲ、ⅣEr=1.7(H/450)0.20 |
Erの計算方法詳細は下表の通りです。(建物の高さが5m以下の場合は常に同じ数値)
③Vo(基準風速)の確認
Voは建設省告示第1454号により、確認できます。
【Vo(基準風速)】 建設省告示第1454号に記載の基準風速を参照。(旧地名で確認) 国立研究開発法人 建築研究所ホームページへ遷移します。 |
④Cf(風力係数)を確認
Cfは建設省告示第1458号により、「屋根形状」「勾配・建物形状」などから確認できます。算出が複雑なため、代表的な項目をご紹介します。
【Cf(風力係数)】 ・屋根形状 : 「一般部」「周辺部」「隅角(ぐうかく)部」「棟隅部」により係数が異なります。(下表参照) ・勾配・建物形状:勾配、ピーク風圧係数や閉鎖型・開放型建物により係数が異なります。(詳細省略) →ピーク風圧係数や閉鎖型・開放型建物に関する説明は省略。 |
a´:平面の短辺長さと高さの2倍の数値のうち、いずれか小さな数値(30を超えるときは、30とする)(単位:m) |
表.勾配による風力係数一覧表
勾配 | 角度 | 一般部 | 周辺部 | 隅角部 | 棟隅部 |
---|---|---|---|---|---|
陸屋根 | -2.5 | -3.2 | -4.3 | -3.2 | |
1/10 | 5.7° | -4.3 | -3.2 | ||
- | 10.0° | -4.3 | -3.2 | ||
2/10 | 11.3° | -4.2 | -3.5 | ||
3/10 | 16.7° | -3.6 | -4.7 | ||
- | 20.0° | -3.2 | -5.4 | ||
4/10 | 21.8° | -3.2 | -5.1 | ||
5/10 | 26.5° | -3.2 | -4.0 | ||
- | 30.0°以上 | -3.2 | -3.2 |
部位ごとに風圧力を算出し、それぞれに対して防水層に耐風圧力との比較を行います。
【防水層の耐風圧性】
一般的な防水工法(アスファルト防水、改質アスファルト防水、シート防水、塗膜防水)は、上記計算による「風圧力」に耐えうる性能を有しています。
留意すべき項目は
①「機械(ディスク板)」により下地へ固定する場合
建築物の高さや地域により、固定耐力を確認する必要があります。
・改質アスファルト防水機械固定工法「メカトップ」
・塩ビシート防水機械固定工法「メカファイン」
②勾配屋根に施工する場合
建築物の高さや地域により、「接着剤の塗布量」「軒先、ケラバのビス」「桟木ピッチ」に考慮する必要があります。
・アスファルトシングル葺き工法「マルエスシングル」「エクシード」
→改質アスファルト防水粘着工法やトーチ工法は、十分な接着力があります。(ずれ止め防止措置は勾配により必要)
③離島や山の頂上など、強風が予想される地域
耐風圧性が高い「アスファルト防水保護工法」や「ウレタン塗膜防水」又は、各種工法の密着仕様の採用を推奨しています。
自動計算を希望される方、関連ブログ(強風に強い防水工法TOP3)はこちらから
次回ブログは2023年2月1日(水)公開予定です。