【実績100年以上】防水の原点アスファルト防水とは?
水から建物を守る為に使用される防水材料は、材料・工法の特徴を把握することにより、適切な選定をする事ができます。しかし、防水材料の原点であるアスファルト防水だけでも多様な種類があり、違いがわからないという方も多いかと思います。この記事ではそんな方々の為に、
- アスファルト防水の歴史
- アスファルト防水の実績
- アスファルト防水の種類と特徴
について解説します。
1.アスファルトの歴史
アスファルトの歴史は紀元前までさかのぼり、防水材料の中で最も歴史が深い材料と言えます。文献によると、紀元前3200年にメソポタミア、インダス川流域で船の防水に使用されていたそうです。下の画像はピッチ湖と呼ばれるトリニダード・トバゴにある世界最大の天然アスファルト湖です。
世界最大の天然アスファルト湖「トリニダード・ピッチレイク」
出典:http://izismile.com/2011/07/05/the_well_known_asphalt_lake_18_pics.html
現在日本で流通しているアスファルトは殆どが石油から精製されたものですが、精製技術が発展する前まではこのような天然のアスファルトが使われていました。防水材料は科学の発展に伴った人工的なものも多い中、アスファルトは唯一地球から自然に生まれた材料といえます。
2.防水実績100年以上は伊達じゃない
アスファルトの歴史が深いことは前述した通りですが、日本で使用されている防水工法としても最も長い歴史を持ち、今もなお、信頼のおける防水工法として位置付けられています。日本では、116年前に大阪ではじめてアスファルト防水が施工されており、塩化ビニルシート防水が約60年前、ウレタン塗膜防水は約50年前からである事と比較すると、いかに昔からアスファルト防水が施工されて来たかがわかるかと思います。
当時の大阪瓦斯株式会社事務所 (明治38年8月竣工)
出典:日本の防水~防水工事100年のあゆみ
国土交通省が監修している建築工事監理指針には、選定の目安として屋上の用途に推奨する防水工法がまとめられており、その中でも高度な機能を持つ重要な箇所にはアスファルト防水工法のみが記載されています。
3.多様なアスファルト防水の施工方法
アスファルト防水を選定する上で、工法の特徴を把握する事は極めて重要です。特徴を把握する事で屋根の形状や部位、状態に合わせて適切な選定をする事につながります。しかし、アスファルト防水だけでも施工方法はいくつもある為、名称を聞いただけだと違いがよくわからないかと思います。今回は大きく3つに分類してご紹介しますので、是非覚えてください。
・液体状の材料を塗布する工法(不定形)
【工法名】
アスファルト防水塗膜工法
【施工方法】
クロスで補強しながら液体材料を下地に塗布
【特徴】
この工法は狭小部や設備基礎周りのような複雑な部位がある屋根に適しています。アスファルトを使用した防水工法は他の防水材料と比べて、高い耐用年数を持った防水層です。しかし、アスファルトシートを使用する為、狭小部や設備基礎周りのような複雑な部位がある屋根には施工しにくい工法です。そこで誕生したのがアスファルト防水塗膜工法です。この工法は液体状の為、様々な部位に対応する事ができます。またアスファルトシートと同質系材料なので、容易に併用できます。
アスファルト防水塗膜工法イメージ
・ルーフィングシート単体で施工する工法(定形)
【工法名】
トーチ工法、粘着工法
【施工方法】
トーチ工法:アスファルトシートを火で(トーチバーナー)下地に接着
粘着工法 :粘着層付きアスファルトシートを下地に接着
【特徴】
この両工法は「溶融釜を置くスペースは無いが、アスファルト防水を施工したい」といった場合に推奨できます。また、粘着工法は火の使用を最低限に抑えながらアスファルト防水を施工する事が可能です。在来のアスファルト防水は溶融釜にアスファルトコンパウンドを投入し、アスファルトを流しながらアスファルトシートを下地と接着するのが一般的です。トーチ工法及び粘着工法は溶融釜を使用しない為、溶融釜のスペースを確保せずにアスファルト防水を施工できます。また、工場であらかじめ製造したアスファルトシートを積層させる事で、液体材料と比べて均一な防水層の厚みを確保でき、高い耐用年数をもった防水層を形成できます。
トーチ工法(左)・粘着工法(右)イメージ
・液体材料とルーフィングシートの両方を併用して施工する工法(不定形+定形)
【工法名】
熱工法、湿気硬化型工法
【施工方法】
ルーフィングシートを液体状のアスファルトを流しながら下地と接着
【特徴】
熱工法は最も古くから採用されてきており、信頼性が高い防水です。日本ではじめて施工されてから100年以上経った今でも重要な建物にはこの施工方法のみが採用されています。その理由は、
・液体材料とシートが一体化し、高い防水性がある
・何層も積層する事で高い耐用年数を確保できる
といったメリットがあるからです。液体状のアスファルトを流しながらルーフィングシートを施工する為、様々な下地の形状に対応しつつ、均一な防水の厚みと確実な防水性も確保できます。いわゆる液体とシート、お互いのメリットを組合わせた施工方法と言えます。一方で、臭い・煙の発生や溶融釜を使用する際のスペース確保の課題もありますが、近年では技術の発展により、溶融しても、臭い・煙がほとんどでないアスファルトコンパウンドや先述した火を使わない湿気硬化型アスファルトのような材料を用いる事で、溶融釜を使用せずに、液体材料とシートを併用した確実な防水層を形成する事ができます。
熱工法(左)・湿気硬化型工法(右)イメージ
日本アスファルト防水工業協同組合仕様書『アスファルト防水の仕様』にこの記事で紹介した防水工法がより詳しく記載されています。
- ご興味のある方はこちらをクリック※カタログページに移動します
まとめ
最後に内容をもう一度確認してみましょう。
- アスファルト防水の歴史は深く、日本での実績も100年以上前からになり、信頼性が高い
- アスファルト防水の種類は多様な為、特徴を理解する事で建物に最適な工法がわかる
このように多様な工法が生まれたのは時代が進むにつれて、施工の簡易化、地球環境への対応、複雑な部位への施工等様々な要望に応えてきた結果と言えます。
尚、設計される際に防水選定の事でお困りの事がございましたら、まずはお問い合わせフォームからご連絡ください。