【5分で分かる】防水工法の種類と特長
本格的な建築防水の誕生から110余年。現在、防水工法にも多くの種類があり、その種類と特長を把握するのも一苦労です。そこで今回は、総合防水メーカーの視点から各防水工法を分かりやすく、まとめて紹介します。
この記事の内容
1. 防水工法の種類
2. 防水工法の種類と特長
3. まとめ
1.防水工法の種類
防水が施されている箇所は多岐に亘り、「建築防水」「住宅防水」「土木防水」などに分類されています。今回はマンションやビルなどに使用する建築防水にフォーカスしてご紹介します。
防水工法は、下表のとおり4つに大別されます。
赤字:官公庁が「露出仕様」「保護仕様」共に採用している工法 青字:官公庁が「露出仕様」で採用している工法
2.防水工法の種類と特長
2-1 アスファルト防水とは?
防水シート(ルーフィング)を、液状のアスファルト(防水工事用アスファルト)により張り付ける工法です。溶融釜で融かした高温のアスファルトを使用する「熱工法」と、常温のアスファルトを使用する「常温工法」などがあります。
防水工法 | 長所 | 短所 | 備考 |
---|---|---|---|
熱工法 | 最も優れた防水性能、実績 | 施工時の臭い・煙 | 主に新築工事 |
常温工法 | 上記及び環境性能 | やや価格が高い | 新築・改修共 |
【POINT】
官公庁などの重要建物には「アスファルト防水熱工法保護仕様」が採用されています。近年その環境対応版である「常温工法」の採用が増えています。
2-2 改質アスファルト防水とは?
強化したアスファルトルーフィング(改質アスファルトルーフィング)を張り付ける工法です。火(トーチバーナー)で炙り張り付ける「トーチ工法」、粘着層により張り付ける「常温粘着工法」、ビス等を用いて張り付ける「機械固定工法」などがあります。
防水工法 | 長所 | 短所 | 備考 |
---|---|---|---|
トーチ工法 | 施工性能、寒冷地対応、実績 | 火気の使用 | 新築・改修共 |
常温粘着工法 | 環境性能、実績 | やや価格が高い | 主に改修工事 |
機械固定工法 | 施工速度 | 騒音、耐風圧性 | 主に新築工事 |
【POINT】
「トーチ工法」と「常温粘着工法」で殆どのシェアを占め、前者は寒冷地や施工性、後者は環境性能に重視した建物に多く採用されています。改修工事では、既存(元々ある)防水層がアスファルト防水の場合に最適です。
2-3 合成高分子系シート防水とは?
様々な合成ゴムを主成分とする防水シートを接着剤や、ビス等を用いて張り付ける工法です。塩化ビニル樹脂系の「塩ビシート防水」、加硫ゴム系の「ゴムシート防水」、熱可塑性エラストマー系の「TPEシート防水」などがあります。
防水工法 | 長所 | 短所 | 備考 |
---|---|---|---|
塩ビ接着工法 | 意匠性、実績、施工速度 | 鳥害 | 主に新築工事 |
塩ビ機械固定工法 | 寒冷地に最適、耐薬品性 | 耐風圧性、鳥害 | 主に改修工事 |
ゴム接着工法 | 寒冷地に最適、施工速度 | 防水性能、鳥害 | 主に新築工事 |
ゴム機械固定工法 | 環境性能 | 防水性能、耐風圧性、鳥害 | 主に改修工事 |
TPEシート防水 | 環境性能 | 実績が少ない |
※「鳥害」は特に、ポリエチレンフォーム断熱材(柔らかい断熱材)を使用した工法で発生する傾向があります。
【POINT】
改修工事では「塩ビシート防水機械固定工法」が多く採用されています。様々な下地に対応可能な反面、アスファルト系防水と異なり、台風時などの飛散のリスク(耐風圧性に劣る)が高い傾向にあります。
2-4 塗膜防水とは?
様々な合成ゴムを主成分とする液状の防水材を刷毛、ゴムベラなどを用いて塗り付ける工法です。「ウレタン系」「アスファルト系」「クロロプレン系」と、繊維強化プラスチック(FRP)を使用した「FRP系」などがあります。
防水工法 | 長所 | 短所 | 備考 |
---|---|---|---|
ウレタン系 | 意匠性、実績 | 下地の影響を受けやすい | 塗膜防水の代名詞 |
アスファルト系 | アスファルト系防水との相性 | 実績 | 主に地下防水 |
クロロプレン系 | 最も優れた意匠性 | 環境性能 | |
FRP系 | 歩行強度 | 施工可能部位が限定 | 主に戸建住宅 |
【POINT】
ウレタン塗膜防水で殆どのシェアを占めています。アスファルト系は主に地下防水や、改質アスファルト防水との併用、クロロプレン系は意匠性を重視した建物や塩害地域、FRPは室内や戸建住宅など比較的限定した用途に使用します。
3.まとめ
- 建築防水における防水工法には、大別して4つの工法がある。
- 新築工事では、アスファルト防水熱工法の採用が最も多い。
- 改修工事では、
①改質アスファルト防水トーチ工法、常温粘着工法
②塩ビシート防水機械固定工法
③ウレタン塗膜防水
の採用が多い。
- 改修工事では、建物特性、既存防水層の種類、地域特性などにより防水工法の選定が異なるため、専門業者(防水材料メーカーや防水工事店)への相談が必須。
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次回ブログは10月1日(土)公開予定です。